International four days marches Nijmegen
オランダ・ナイメーヘン大会の「歩き方」


【身元確認】テロ警戒のため、2005年度から大会期間中の身分チェックが強化されています。
オランダの法律では、14歳以上の人は、警察官などの法執行者に身分証明書の提示を求められたら必ず応じなければなりません。
ですが、オランダの観光地にはニセ警官が出没するとオランダ警察が注意喚起しています。
パスポート、パスポートのコピー、写真つきの身分証明書などを、防水して常に携帯してください。外国でパスポートを他人に手渡して見せるのは最後の手段であり、まずはコピーや他の証明書を見せて相手の反応を探ってください。

ナイメーヘン大会規定

 この大会は、7月中旬の火・水・木・金に開催される世界最大・最古のウォーキング大会であり、「歩く能力を国家として証明」し、「能力に応じた機会均等」の考えから、年齢と性別、すなわち健常者に想定される体力に応じ、歩く距離が大会規定(以下の表)で決められています。

 大会規定の距離を越えて、さらに長く歩くことを事前に申請し、実際に歩くことはかまいません。しかし、1日目(火曜日)を迎えた以降、やっぱりヤメタ、短くしたい、と変更することは認められません。

 次の表における「年齢」は、その大会の属する暦年に到達する満年齢、と決められています。

年齢 男性 女性
12 - 15歳  30km  30km
16 - 18歳  40km  40km
19 - 49歳  50km  40km
50 - 59歳  40km  40km
60歳以上  30km  30km

 「歩く」とは、「片足ずつが交互に確実に地面に接する体重移動により前進する」と大会規定で定義づけられており、上記定義に合致しない「走ること」は禁止されています。ただし、義足、補助的な杖、視覚等が不自由な方が伴歩者を伴うこと、はそれぞれ認められています。さらに、2003年には、車椅子での参加者(40km女性)を見かけました。

 大会規定では、さらに以下の行為が禁止されています。

 いかなる理由においても大会規定を逸脱する場合、オランダ国家勲章 "Vierdaagsekruis" を受け取る権利がなくなります。

 歩く距離を変更する場合は、事前に変更申請が認められなければならず、遅刻や怪我故障により、1日目(火曜日)以降に距離を変更することはできません。

歩くための事前準備

 4日間での脱落率(1日目を歩き始めた人のうち、遅刻や怪我故障により4日目を完歩できなかった人の割合)は、平均 11%であり、50kmだけでみれば 15%にも達します。

 それだけの過酷な大会ですが、1日4万人強の参加者といっしょに、参加者がまったく途切れることなく、ゴールに向かって歩く、というのは他ではまったく経験できない大会です。

 まず、膝と足首には体重の3倍のショックがかかることから、適正体重以上の方は減量を心掛けましょう。私の経験では、2kg減らして、4日間でトータル2時間、歩く時間が短くなりました。

 靴は、100km、5日間を目安に履きこむと良いでしょう。靴下の厚さや、重ね履きをするか、も履きこみながらチェックしていきます。

 上半身の服装は、Tシャツ(吸汗・即乾のもの)1枚だけをお薦めします。朝4時は、寒くないと言うとウソになりますが、Tシャツと雨具の上半身用を着るか、着替えの予備のTシャツを都合2枚着ていれば、さらに羽織るものが欲しいとは私は思いません。なお日中は、オゾンホールの影響かヨーロッパでは日本よりも紫外線が強いので、肌が露出している部分には日焼け止めも忘れずに。私がよく忘れるのは、首筋から下、手の甲。

 下半身の服装は、綿パン(中薄手のチノパンなど)をお薦めします。特に女性でジーンズを好んで着用される方がいらっしゃいますが、ジーンズや最近のカーゴパンツは生地が厚く、それだけ一歩一歩体力を消耗する直接の原因となり、歩行中に雨が降ったときの乾燥も非常に遅いため、まったくお薦めできません。また、女性のストッキングも、足に豆ができたとき、ズボンの下に着ていると(更衣室などない、野戦病院の状態なので)切らねばならず、治療の妨げとなるので、着用しないよう救急本部では推奨しています。

 日本国内では、50kmの大会を探すのは難しく、また50kmコースの参加者も少なく、制限時間もオランダの13時間(最終日4日目は14時間)より短いはずなので、本番のテストマッチには残念ながらなりません。無理して国内の短い制限時間で 50km を歩き切る必要はありません(私自身、国内の 50km 大会で、ゴール時に制限時間まであと1分しかなかったことがあります)。それよりも、40km 2日連続の大会に何回か参加し、その2日間とも食事・休憩時間込みで「9時間半」以内で歩けるようになることが重要だと思います。

 マラソン・サイクリングでは、直前にカーボチャージ(炭水化物を蓄えること)を行いますが、ウォーキングは持続運動で、脂肪を主体に燃焼することから、特に炭水化物を重視する必要はなく、ビタミン・ミネラルを含めバランス良く食べる必要があります。

 ただし、50kmを歩く場合は、膝・足首の軟骨の消耗が激しいことから、造骨作用を活発とするため、大会一週間前から、カルシウム、マグネシウム、サプリメントのMSM・グルコサミン・コラーゲンなどを積極的に摂取すると効果があると思います。

大会で持ち歩くもの

リストバンド
リストバンド
コントロールカード(有効)、バーコードカード(廃止)
コントロールカード(有効)、バーコードカード(廃止)
距離ワッペン(廃止)
距離ワッペン(廃止)
写真はクリックして拡大。

大会当日の流れ

 50kmは朝未明4時 スタートですから、起床は(宿泊場所にもよりますが)2時半ごろになります。Wedren中央会場には、3時すぎから(その年の会場設営にもよりますが)3本ないし4本、幅10人〜15人程度の長い列ができています。スタート時刻(50kmであれば4時)前であれば、どの列に並んでもかまいません。例えば3時20分頃に並べば10m程度の列で4時5分前後に、3時40分頃に並べば30m程度の列で4時10分過ぎにスタートできます。なお、スタート終了時間(50kmであれば4時45分)間際になると、次の40kmの集団が並びますから、並ぶことよりも、改札係員を探すことに全力を挙げましょう。遅刻は失格です

 スタートは、時報により正時きっかりから開始され、その日のControleカードに改札をリストバンドをスキャンする改札を受けないとスタートできません。コース途中で改札を受けるControleカードは、その日の前日にもらいます。1日目のカードは、月曜の参加登録書引換時に、2日目以降のカードはその前日の完歩確認時にもらいます。無くすと、たぶん失格です。

 特に初心者の方は、後から巻き返すのが難しいので、早目にスタート し、時間を稼いでおくことが大切だと思います。中間点を過ぎると、痛みや疲れで、周りがどうだろうが自分のペースでしか歩けません。その時にどれだけの時間貯金が残っているか、が完歩できるか脱落するかを決めます。規定より早くゴールしても、偉くもなんともありません。第2休憩点(地図コース上で「R」と明示されている2ヶ所目)を過ぎたら、天気、残りの距離、残りの時間を計算し、休憩の時間や回数を調整します。

 今でこそ、私はデジタルカメラや電池を持ち歩いていますが、初めてナイメーヘンを歩いたときは雨具と超軽量の使い捨てカメラだけを腰に結わえ、リュックすら持ちませんでした。グラム単位で携行品の重量を管理 することが体力を温存するには大切だと思います。

 長距離を歩くときは、血液が心臓(体幹)から離れ、四肢に集まりますので、胃腸の機能が低下 する場合があります。その場合、消化の悪い肉を減らし、牛乳やヨーグルト、スープ、バナナを取ることで、体調を維持するのが良いでしょう。それら飲食物を買う出店をさがすのは全く苦労しません。特にスープは、缶詰を温めたりインスタントのもの(1ユーロ程度)から、お店やホームメードのもの(4ユーロ程度)まで千差万別で、私の楽しみの一つです。味は、トマト(Tomaten)スープと、ロント(Groente)スープ(野菜・肉団子スープにスパゲティの細切れが入ったもの)が二大主流です。

 水分 は十分に補給しましょう。10分から15分に一度、こまめに、1口2口ずつ飲むのが良いと思います。いわゆる「スポーツドリンク」で、特に飲んで2分以内にもう一度飲みたくなるものは、販売量を増やすために糖分が過剰なものだと思われます。私は、日本から2リットルのペットボトル1本をスーツケースに入れて持ち込み(近年テロの防止から2リットルの持込はできない場合もあります)、毎朝 500ml ずつ移し替えて飲みます。暑いと数時間、遅くとも午前中に無くなり、出店でドリンクや牛乳を買い足します。牛乳は喉を保護してくれて(乾きを減退し)、栄養補給にもなるので、品質の変りやすい酷暑の日でなければ、お薦めです。

 快晴時には塩分も必要です。2003年大会では酷暑による熱中症で、私が見ただけで5回、救急車を見送りました。その点、私はスープの飲み比べが大好きなので、この大会に限っては、塩分が足りなくて困ったことはないです。

 トイレは数km おきで、行きたいときにすぐにはない場合があります。2002年より、地図上に「T」の表示でトイレが図示されるようになりました。また、「R」の表示がある公式休憩所にも必ずトイレはあります。トイレットペーパーは、有料のトイレには原則としてあり、無料のトイレにはない場合もあります。  食料・飲物 を調達するのは、トイレよりもっと頻繁に出店が出ているので容易です。店によって値段がかなり違いますので、慣れたら安い店を選んで買うこともできるでしょう。店は、4日とも巡業する店と、ある曜日のある場所に出店をする店の2パターンがあります。前者の店では4日間のうちに顔なじみになることも可能で、最終日は在庫一掃のため安くしてくれる……かも。

 日本で売っているいわゆる栄養ドリンク も、完歩の可能性を高め、疲労を減らするのに効果があると思います。携帯する場合は、重さを考え 3Oml タイプのものを選びましょう。私の経験では、中間点を過ぎて飲むと、ドリンクの効果を体感するにはいいですが、完歩後もカフェインが抜けず、眠るのに困ります。50km のうち 15km 程度を歩いた時点で1本飲むと、私の場合はちょうどいいようです。

 以前、まだ長距離を歩き慣れていなかったころ、ビールで痛さを紛らわしたことがありました(私の経験では関節痛が楽になります)。海外では水やジュースの代わりにビールを飲むのは珍しくないのですが、運動中のアルコールは体調を急変させ、体にダメージを与えることもありますので、注意をしてください。

 2001年にナイメーヘンを歩いたときは、体重管理を怠り、雨によりできた足裏の豆をかばって歩いたため、膝と足首が痛くてたまらず、インドメタシン製薬(鎮痛消炎剤) を多用することになりました。外用のインドメタシン製薬は、1%であることはどのメーカーも変わりませんが、痛みへの効き方(患部への薬の到達度合い)は私の経験では、メーカーによって異なります。また、インドメタシン製薬は、筋肉を衰えさせることが複数の文献で報告されているので、できるだけ関節周辺にだけ塗るようにしましょう。

 朝2時半に起きるには、夕方6時から7時 には寝るようにしましょう。朝2時というと大変に聞こえますが、時差を換算すると日本では朝9時です。従って、このナイメーヘンでは時差にそんなに苦労した経験が私にはありません。(この点は個人差が大きいので、ご容赦ください。)

 最後に不幸にして怪我故障で歩けなくなった場合
 近くに林があって棒切れを拾い杖にでき、または鎮痛剤を使い、少しでも歩けるなら、次の公式休憩所(地図で「R」や赤十字で表わされている)に行く努力をしましょう。休憩所では、医師・看護士による治療を受けられ、さらにマッサージチームがいる場合もあって再び歩けるようになるかも知れず、治療の甲斐なく参加者が棄権を決意した場合には、Wedren 中央会場まで係員の車で送ってくれます。
 なお、公式休憩所以外の場所でも、医師が随時コース上の歩行者の歩き方を観察しており、足を引きずっている等、怪我の程度がひどいと判断された場合にはドクターストップ、すなわち棄権を命じる権限があります。このドクターストップの判断は大会としての最終判断であり、抗弁はできません。
 とても公式休憩所まで歩いてはたどりつけず、棄権を前提に、しかし語学の問題で自力でタクシーなどを使えない場合は、もよりのお店や、出店の椅子で黙って休ませてもらいましょう。制限時間である 17時が近づき、もはや常人が残りの距離と時間ではゴールすることができなくなったとき、コース上を「バックアップカー」という車がくまなく走り、脱落者を収容します。コース上、またはコースに直接面したレストランや飲食店の中にいる限り、時間がくれば係員が捜索に来て、英語がしゃべれなくとも、Controleカードなどを提示しながら痛そうな顔の一つでもできれば、必ず収容し、Wedren中央会場まで送り届けてくれます。


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