International four days marches Nijmegen 2006
De Vierdaagse 2006
オランダ・ナイメーヘン 4日間ウォーキング大会 2006年大会中止に寄せて



局地的に最も気温が高かった(*1)とされる川堤防。
放水する担当者、救急車、白バイ、暑すぎて持ち主が避難した後の沿道の観客席。

12月に送付された、第90回大会特別記章について
・オランダから12月に発送された(日本では1月になって到着したとの報告あり)
 記章が、各参加者の登録住所に発送されました。
・記章は、ナイメーヘン市の彫金家 Wilma Coehoorn 女史の作。
 女史は、兄弟が実際に第90回大会に参加された経験を元に、
   太陽
   水・汗・涙
   大会名 4daagse の「4」
 の3要素を織り込み、金色をベースとした記章を完成されました。

10月3日発表 大会事務局通達
・Hermans氏を長とする、第三者委員会による調査結果(要旨抜粋)
 ・第一の責任は参加者個人にある。大会参加期間中、体調を整え、着衣等を調節し、
  食料・塩分や水分を適宜補給し、棄権のタイミングを判断する責任がある。
 ・第二の責任は、大会事務局にある。
 ・第三の責任は、政府機関にある。
 ・結論として、第一の責任の所在は、大会事務局ではなく、参加者個人にある。
 ・なお、第三者委員会は、今後への提言として、12の改善案を提示する。
  1) 医学的・気象学的・緊急時対処に関する情報提供を増やすこと。
  2) 1)の情報提供を得たと仮定した4日間の事態シミュレーションを行うこと。
  3) 緊急事態対処の演習・練習を大会前に毎年行うこと。
  4) 日単位の実行/中止を判断する代表者/専門家チームを組織すること。
  5) 30kmコースの更なる距離短縮等、対処方法の選択肢を広げること。
  6) 異常気象に際し、第一優先で対応すべき場所・属性を検討すること。
  7) チェックポイントで、大型スクリーンで、
    あるいは携帯メール等情報技術を活用した情報提供を行うこと。
  8) 過酷な状況においては、情報提供だけでなく、
    水や帽子を入手できる実行手段を伴うこと。
  9) 酷暑の影響を研究し、さらには他の暴気象に研究を広げていくこと。
  10) 既に課題となっている場所(人が滞留しやすい場所等)への注視を強めること。
  11) 最大参加者数を再検討すること。
  12) 行政側での専任担当者の任命を検討すること。

8月11日発表 大会事務局通達
完歩勲章(オランダ王国国家勲章 Vierdaagsekruis)は4日間完歩者のみに与えられるものである。
・しかし第90回大会に参加した証(あかし)を希望する声は多く、大会事務局は特別な記念品を郵送により参加者全員に授与する。この記念品は「記章」と「ステッカー」で、「記章」は完歩勲章の布地リボンの部分や、衣服に装着することができるようにする。
・参加費については検討したが、結論として返還しない
・別送完歩証 Extra Certificate を別途料金を支払い申し込んだ者は、その別途料金分 7.50ユーロを口座振込により返金する。返金を希望する者は、電子メールか郵送で、金融機関口座の金融機関識別コードBIC (*注1)、支店番号、支店名、口座番号、口座名義人、口座名義人の生年月日を大会事務局に連絡 (*注2) すること。
来年第91回大会の登録申込に関し、特別ルールを設定する。つまり、第90回大会の1日目(火曜日)の朝スタートチェックを受け歩き出した者は、1日目完歩の如何にかかわらず、2007年初春の指定期間内に登録申込をし、参加費を入金すれば登録受理が保証される。つまり応募者多数の抽選などの理由で大会出場権を失うことはない。

(*注1) BICコードは、日本ではSWIFTコードとして理解されている場合がある。正確にはSWIFT「国際銀行間通信協会」が管理しているBIC「金融機関識別コード」。また、大会事務局通達の中にあるIBANコードとは支店略号や口座番号を含めたEU諸国で通用するコード。日本ではIBANコードは採用されていないため、BICコードを使う。

(*注2) 連絡は日本語ではしないように。 支店名は正確な英語表記を金融機関に確認したほうが良いでしょう。 海外銀行との口座振込は、通常、送金人も受取人も手数料を負担します。 特に日本の金融機関は送金額面を問わず 2000円以上の手数料を天引きする場合があり、結果として手取りがないことも考えられます。

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 大会第1日目、気温36度(*1)、地表近くでは一時42度(*2)まで上昇する中、大会参加中に亡くなられた58歳男性(*3)と66歳男性(*3)のご冥福を心から祈念申し上げます。

 犠牲者を食い止めるためあらゆる手を尽くした、大会役員、大会ボランティア、警察、消防、救急隊、赤十字社、水道局、オランダ国軍、ナイメーヘン市および関連市町村、ナイメーヘン郡、へルダーランド州、その他関係する各位に敬意を表します。
 そして4万人を越えるウォーカーに歓声と水道水を惜しみなく供給してくださった沿道のすべての住人の皆さんに、感謝の意を表します。

 犠牲者が出た原因、特に前日の気象予報を基に「規定距離短縮」または「スタート時間早発」を認めていれば犠牲を避けられた可能性については、オランダ政府の大臣経験者で、この 4daagse 大会でも過去に2回完歩された Hermans氏を長とする、第三者委員会を立ち上げて検証することが決まりました。最終報告書は 2006年10月をメドに作成され、公開されるとのことです。

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 思えば2003年の第87回大会も暑かった。
 2003年大会では、前日受付での参加登録のため、Wedren中央会場に隣接する建物の中庭(今年90周年記念品=バックパック を引き換えた場所)で、受付の列は遅々として進まず、あまりの暑さに水のペットボトルが主催者から受付を待つ人々に振舞われたほどだった。
 2003年の大会初日は、今年と同じく飛行機雲以外の雲は一切見当たらない快晴で、私は50kmを完歩する間、確か5回、サイレンを鳴らす救急車を見送った。
 しかし、今年の大会初日は、サイレンを聞くこと10回を越えた時点で、数える気力をなくしてしまった。自分自身が歩くのがやっとだった。

 今年は朝も寒くなかった。
 年によっては、8度まで気温が下がり、Tシャツ1枚ではとても寒くて、羽織るものとして雨カッパを着ないと50km朝4時のスタートを待てないこともあったが、今年の朝4時は、Tシャツ1枚で何の違和感もなかった。

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 グッタリした仲間の両脇をかかえて、その仲間の頭上を日傘で守る制服のグループ。
 倒れた人の上にアルミシートを広げ、救急隊の到着まで日陰を守ろうと必死な人々。
 ショック状態の迷彩服の同僚をしっかり背後から支えて安定させる軍隊の一団。
 これらが、私が見てきた光景の一部である。訓練を経ている軍人もが倒れていたことは、私を多いに動揺させた。

 最後の7キロ〜1キロとなる川土手と大橋は特に暑かった。川土手の出店の数も少しは増えたようだが、午後遅くにはすでに売る飲み物もなくなり、売り子さんたちもぐったりしていた。

 死亡 2名 (*1)  死亡者は 1972年大会(2名)以来 (*2)。
 重体(危機を脱す) 1名 (*2)
 救急搬送 69名 (*1)
 体調不良を届け出た人 300名以上 (*2)
 大会1日目棄権・遅刻・途中リタイア 1021名 (*4) やはり暑かった2003年大会の同数値は 827名

 大会1日目完歩者 42120名 (*4)

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 今後、2007年の第91回大会に向けて、様々な議論が巻き起こるだろう。
 夏のバカンス期間のお祭りであり、オランダ国内を見渡しても1大フェスティバルであるので、日程を7月第3週からずらすのは難しいかも知れない。既に第91回大会は 2007年7月17〜20日と発表されている。
 日程変更が難しいと仮定すると、距離やコースが議論の的になるかもしれない。

 亡くなった人は何のために亡くなったのか。
 自分自身の名誉のためか。完歩者に授与されるオランダ王国国家勲章のためか。一緒に参加する仲間がいたためか。初志を貫徹するためか。

 主催者も参加者も変えるべきところは変え、しかし「ウォーキング」という「ルール・マナーも厳しさも喜びもあるスポーツ」の中でも、世界一の歴史と、世界一の参加者を誇るこの大会で、2007年第91回大会初日の適切な時間に、参加者がそれぞれの場所で一斉に立ち止まり、全員で黙祷を捧げることができることを、私は期待している。


出典・ニュースソース
(*1)http://en.wikipedia.org/wiki/International_Four_Days_Marches_Nijmegen
(*2)http://www.expatica.com/source/site_article.asp?subchannel_id=1&story_id=31655
(*3)http://www.expatica.com/source/forum_thread.asp?channel_id=1&thread_id=46586
(*4)http://www.4daagse.nl/index.asp?taal=en&pagina=zzb-barometer2006

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